ひるひなか
-自宿冒険者を愛でるCardWirthシナリオ感想置き場-
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◆0.■■の話
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目覚めた時には、どこかの崩れた聖堂にいた。
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一部の天井が抜け落ちており、風雨にさらされた調度品はここが廃墟となって久しいであろうと感じさせた。
外の明かりに照らされた周囲を見渡すと、自分の周りには見知らぬ男女が数人倒れていた。いずれも旅慣れているような装備を纏い、そしていずれもが獣に襲われたかのような数多の傷を負い、こと切れていた。
かつての聖堂で動くものは自分一人であり、木々のざわめきのみがその場を通り抜けていた。
異様な光景に背筋が寒くなり、その場から離れなければという衝動に駆られる。
立ち上がって改めて自分の様子を確認すると、彼らと同様の装備品を備えており、特に傷は負っていないようだった。
しかし所々の衣類は裂け、いくつもの血痕が染みを作っているのを見るに、何かしらの騒動に巻き込まれていたであろうことは察せられた。
この場所で何かが起き、どうやら自分は助かった。
それ以前は?
何故ここに?
どこから来た?
記憶を辿ろうにも、霞がかったようで判然としない。
彼らが何者なのかも、自分の名前すら判らない。
どれだけ長い間意識を失っていたのか、少し喉の渇きを感じる。
残念ながら手元の水袋は空のようだ。
ここに留まっていても仕方ない。
廃教会を後にし、その門扉に刻まれた名称の一部だけ、頭に置いた。
しばらく歩いていくと、地平線から見たこともない強烈な閃光を浴び、慌てて物陰に逃げ込んで初めて、今までが夜であったと気付いた。
渇きはどんどん酷くなり、それは泉の水を流し込んでも治まることはなかった。
ふと、得も言われぬ甘い匂いが鼻をくすぐり、誘われるように元を辿ると、崖下に一人の旅人が倒れていた。
崖上で足を滑らせたのか、頭などに傷を負っており、意識はなく、その具合からは致命的であると思われた。
傷口からは真っ赤な液体がとくとくと流れ、このままではただ土に染み込むばかりだろう。
それにしてもこの匂いはなんだろう。何か熟れた果物でも所持しているのだろうか。
思いながらも本当はその正体に、本能は検討を付けていた。
液体はどんどん流れていく。
自分はこんなにも、渇いているのに。
屈み込むと流れ出るそれを啜り、より鮮度の高いものを求めて鋭利な牙を立てた時、霞が一部晴れていくのを感じた。
よくよく見れば、自分の爪の間には、赤黒い乾いた血がびっしりとこべりついていた。
きっと、
きっとそうなのだろう。
名も知らぬ聖堂の彼らは、そして自分は。
ぽたりと落ちた雫に、この瞳にはまだそういう反応があるのかと、自嘲気味に安堵した。
すっかりと渇きが癒えた代わりに、命を失った彼の姿を眺めた。
自分が通りかからずとも助からなかったであろうが、追い打ちをかけたことへの罪悪感があった。
何かしてやれることはないかと、手がかりを求め荷物を検めると、手帳に常宿への返済履歴が細かに記されていた。
几帳面な人物だったのだろう。きっと宿では彼の帰りを待つ人がいるのだろう。
せめてもう戻らないことだけでも伝えねばと、彼の亡骸を埋葬したのち、手帳を手に、その宿を目指した。
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CWシナリオ『局外者』をオマージュしています。
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目覚めた時には、どこかの崩れた聖堂にいた。
一部の天井が抜け落ちており、風雨にさらされた調度品はここが廃墟となって久しいであろうと感じさせた。
外の明かりに照らされた周囲を見渡すと、自分の周りには見知らぬ男女が数人倒れていた。いずれも旅慣れているような装備を纏い、そしていずれもが獣に襲われたかのような数多の傷を負い、こと切れていた。
かつての聖堂で動くものは自分一人であり、木々のざわめきのみがその場を通り抜けていた。
異様な光景に背筋が寒くなり、その場から離れなければという衝動に駆られる。
立ち上がって改めて自分の様子を確認すると、彼らと同様の装備品を備えており、特に傷は負っていないようだった。
しかし所々の衣類は裂け、いくつもの血痕が染みを作っているのを見るに、何かしらの騒動に巻き込まれていたであろうことは察せられた。
この場所で何かが起き、どうやら自分は助かった。
それ以前は?
何故ここに?
どこから来た?
記憶を辿ろうにも、霞がかったようで判然としない。
彼らが何者なのかも、自分の名前すら判らない。
どれだけ長い間意識を失っていたのか、少し喉の渇きを感じる。
残念ながら手元の水袋は空のようだ。
ここに留まっていても仕方ない。
廃教会を後にし、その門扉に刻まれた名称の一部だけ、頭に置いた。
しばらく歩いていくと、地平線から見たこともない強烈な閃光を浴び、慌てて物陰に逃げ込んで初めて、今までが夜であったと気付いた。
渇きはどんどん酷くなり、それは泉の水を流し込んでも治まることはなかった。
ふと、得も言われぬ甘い匂いが鼻をくすぐり、誘われるように元を辿ると、崖下に一人の旅人が倒れていた。
崖上で足を滑らせたのか、頭などに傷を負っており、意識はなく、その具合からは致命的であると思われた。
傷口からは真っ赤な液体がとくとくと流れ、このままではただ土に染み込むばかりだろう。
それにしてもこの匂いはなんだろう。何か熟れた果物でも所持しているのだろうか。
思いながらも本当はその正体に、本能は検討を付けていた。
液体はどんどん流れていく。
自分はこんなにも、渇いているのに。
屈み込むと流れ出るそれを啜り、より鮮度の高いものを求めて鋭利な牙を立てた時、霞が一部晴れていくのを感じた。
よくよく見れば、自分の爪の間には、赤黒い乾いた血がびっしりとこべりついていた。
きっと、
きっとそうなのだろう。
名も知らぬ聖堂の彼らは、そして自分は。
ぽたりと落ちた雫に、この瞳にはまだそういう反応があるのかと、自嘲気味に安堵した。
すっかりと渇きが癒えた代わりに、命を失った彼の姿を眺めた。
自分が通りかからずとも助からなかったであろうが、追い打ちをかけたことへの罪悪感があった。
何かしてやれることはないかと、手がかりを求め荷物を検めると、手帳に常宿への返済履歴が細かに記されていた。
几帳面な人物だったのだろう。きっと宿では彼の帰りを待つ人がいるのだろう。
せめてもう戻らないことだけでも伝えねばと、彼の亡骸を埋葬したのち、手帳を手に、その宿を目指した。
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