咎人と魔法のパイプ

この果てしない砂の海で


巡り合ったのも何かのご縁 (骸を見つける)


青年「水…はないわな…ん…?」


古い、装飾の入ったパイプを手に取る


 


~咎人と魔法のパイプ~



 

青年「年代物…骨董屋で高値がつくかな?」こする
「まー言ったところでしょうがないが…」


パイプ「何故?」

青年「流罪にかけられてんのよ。砂漠の真ん中で置いてかれたの。街に帰ってもどうせ殺され…」
パイプ「ほう、罪人…」
青年「………」


青年「どうやら思いの外俺は死にかけているらしいな…」

パイプ「何をやったんです?」
青年「まるでパイプから声が聞こえるような気がして…」
パイプ「大丈夫ですよ、貴方に話しかけていますから」


青年「いやいやいや…」「パイプw」

パイプ「確かにパイプですけどね」
青年「…」


パイプの裏側を確かめる

逆さにする


パイプ「それで、さっきの質問ですが」

青年「は?いや、何、どうなってんの?何で声が出てくんの?怖」
パイプ「火を焚けば煙も出ますよ」
青年「あ、そうなんだ。煙くならない?」
パイプ「私が?」
青年「うん」
パイプ「ふふふ!やってごらんなさい」


骸の鞄から草とマッチを取り出す


青年「一体何をやってるんだか俺は…」


青年「(上等な草だな…元はいいとこの出か…御愁傷様…)」

「(まあ今生での最後の一服と思えば…)」


パイプをふかす


パイプからゆるりと煙が出て、ゆらゆらと踊るように青年を囲む


パイプ「ほらね、煙が出たでしょう」


青年「思ってたんとちょっと違った…」

パイプ「それで、さっきの続きを」
青年「あーなんだっけ?」
パイプ「なんの罪を犯したのです?」
青年「別に…」「ただの身内の権力争い」「体よく厄介払いされたんだよ」「俺がいない方が万事上手くいくらしい」


パイプ「…元の暮らしに戻りたいですか?」


青年「元の暮らし…ね…」「正直さほどの未練はないかな…」

パイプ「なら新しい暮らしはどうです?」
青年「そうだな~とりあえず…」「水が飲みたい!」


パイプ「あちらをご覧なさい」煙が伸びていく


砂丘の向こうにオアシスがある


青年「神の恵みよ…」


水を飲む
青年「生き返った」

「流罪の身で生き返ってどうすんだって話だが」
パイプ「そこに木の実もありますよ」


青年「なぁパイプよ…お前は俺にどうして欲しいんだ?」木の実を食べつつ

青年「まさか願いを何でも3つ叶えるとか言うんじゃあるまい」
パイプ「だとしたらあと2つですね」「まぁとりあえずは、貴方の事が知りたいですね。こんな砂漠の真ん中でお会いしたのも何かの縁。折角なのでお話しましょう」
青年「どうも狙いが分からないと気持ちが悪いな…拾った相手の精気を吸いとるタイプのアイテムなんじゃ?」そして骸に…


パイプ「だとして貴方に水のありかを教えます?」

青年「そこは一回回復させてからの」
パイプ「そんな回りくどい真似はしませんよ」「あっ、そろそろ燃え尽きそうです」
青年「燃え尽きると何かまずいのか?」
パイプ「煙が出ません」「そうすると、」青年に煙がまとう


パイプ「少しだけ不自由です」


青年「お前に今以上の自由はないのか?」新たに火をつけながら


パイプ「どうでしょう…もう長いこと経って…よく思い出せないのです…」



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青年「ところでお前って、男と女どっちなんだ?」

パイプ「どちらだと思います?」
青年「難問だから尋ねているんだ」
パイプ「好きな方でいいですよ」
青年「無性別的なやつなのか?」
パイプ「そういう訳でもないですが…こうなってしまっては…ねぇ…」

青年「いや性別あるなら教えてくれよ!いいじゃん減るもんじゃなし!」
パイプ「私の性別がどちらなのかによって、貴方の態度が変わります?」
青年「そりゃあ、女なら下ネタ控えようかなとか…ちょっとは…」
パイプ「なるほど」

パイプ「私はこのままでいいのでこのままにしましょう」
青年「クソ!モヤモヤする…!」
パイプ「パイプなだけに」
青年「うるせえよ!」

青年「願いを叶える力があるのか?」
パイプ「ないです」
青年「ないのかよ」
パイプ「煙が出ていれば少し遠くまで見渡すことができます」
青年「まあ…便利ではあるが…」
パイプ「あと煙を吸い込んだ人間を多少操れます」
青年「オイ初耳だが」


青年「俺めっちゃ吸ってる…!!」

パイプ「ふふふ、そうですね」
青年「なに!?もしや既に操られてんの!?」
パイプ「さ~どうでしょ~」
青年「そこ誤魔化さないでくれよ!!」


パイプ「冗談ですよ」「貴方を操ってなどいません」

「私は貴方と話したいだけなのに、そんなことしても意味がありませんから」
青年「…………」


パイプ「あ、ちなみにこの声は持ち主にしか聞こえません」

青年「持ち主」
パイプ「手から離せば声は届きませんよ」
青年「えっそうなの?」


パイプを地面に置く


青年「パイプ…?」


パイプはただ地面に置かれ微動だにしない

青年「おーい…」


青年「マジで静かになった…っていうかこれこのまま離れてもいいってことじゃ…」


青年「……」



パイプ「…ありがとう」

青年「なにが」
パイプ「また、私を手に取ってくれて…」
青年「別に」
パイプ「正直…ほっとしました…」
青年「……」
パイプ「あ…もうじき燃え尽きそうです」


火をつけてふかそうとする

青年「…」
パイプ「…」


青年「(なんか気まずい)」


青年「(い、いや何を考えてるんだ俺は。パイプだぞ?ただの古パイプ。無機物。大体こうしなきゃ火が付かない…)」


直接息を吹き掛け火をおこす


パイプ「わっそうきましたか…」

青年「ホラついたぞ!」
パイプ「ありがとうございます…」



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パイプ「…貴方が変に意識し出してから、何だかこちらまで気まずくて…」

青年「…悪かったよ…」

パイプ「変に優しくされるとくすぐったいです」
青年「そうなのか」くすぐる
パイプ「あ、そういうことじゃないんです」
青年「なんだよ」

パイプ「痛みとか、触覚っていうのはすっかり忘れてしまっていて…もっとこう、精神的な話です」
青年「ふーん…」


パイプ「ところでこれからどうします?折角お互い生き返ったことですし、どこかに行ってみませんか?」

青年「んー?そうだなぁ…適当にぶらぶらするか…(実家と反対方向に…)草も調達しないとだし…」
パイプ「いいですね!ぶらぶらするのは随分久しぶりです」

青年「そうだ、お前長生きそうだし何か話して聞かせろよ。どうせ千くらい持ちネタあるだろう」
パイプ「構いませんが…いかんせん昔の事なので…オチを煙に巻いても怒らないでくださいね」
青年「先回りしやがったな…」



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